コープ福祉講演会が12月14日、札幌市内で開かれ、北大教育学研究院の上山浩次郎助教が「北海道の子どもの貧困について」話しました=写真=。
上山さんは教育機会の地域間格差や不平等、特にお金の格差に関心をもっています。北海道と札幌市の子どもの生活実態調査(2016、2017)にかかわり、その資料を基に講演しました。
子供の貧困とは、「子供が経済的困窮の状態におかれ、発達の諸段階におけるさまざまな機会が奪われた結果、人生全体に影響をもたらすほどの深刻な不利を負ってしまうこと」(松本他2016)と定義されます。ポイントを①お金がない②子どもに複合的な不利をもたらし、能力の伸長を阻み、希望を失わせ可能性と選択肢を狭めてしまう③世代間連鎖④子育て世帯の貧困とイコール、という4点にまとめました。
2006年に日本の相対的貧困率がOECD諸国で第2位だったことから、研究が進展し、2013年に子どもの貧困対策の推進に関する法律ができました。同法に関しては、貧困率を低減させる(所得再配分率の強化など)対策が検討されていない、基本は子供の自助努力を促すことにあって、貧困そのものを減らすことを目的にしていない、などの研究者からの指摘があります。同法附則第2条に「施行後5年を経過した場合に、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認める時には規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講じる」とあります。来年2019年が5年後にあたり、上山さんは「今後の在り方を考える時期」と提起しました。
北海道の子どもの貧困率は2007年以降、上位10県に入っており、2012年は19.7%で5位でした。都道府県別で北海道は失業率が高く、非正規雇用率も高いうえに、ひとり親家庭、特に女親と子供の世帯が14.4%(2015年)と、全国1位でした。これらが、貧困率の高さの背景にありそうだ、といいます。
先の調査では、低所得者層は、親子そろって旅行やキャンプに行く比率が低く、中学・高校生が部活動に参加しない理由としてお金や家の事情を挙げる傾向が高くなっていました。大学や大学院まで進みたいという希望者の割合も所得によって大きな差がありました。調査結果は道と札幌市のホームページで公表されています。